2023/12/23
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小さい家でもかっこよく造る 「3ステップ設計デザイン手法」その2
ポスターや絵のデザインを美しく仕上げ、売れるようにする方法や、売れるデザイン、グラフィックデザインに対するアプローチが存在します。今回は住宅に焦点を当てたものとして、シンプルデザインの4つのステップをご紹介します。おそらく、この考え方は私だけのものだと思いますが、1つ目が近接、2つ目が整列、3つ目が反復、4つ目がコントラストです。これらの4つが揃っているものが本当のシンプルデザインとなります。どれか1つでも欠けてしまうと、シンプルに見えるけれども、実際は「なんちゃって」のような印象を与えてしまいます。
4つの中で一番重要なのは、近接
シンプルデザインにおいて、これが80%を占めています。
その威力は非常に強力であり、近接の力を理解できるかどうかで、デザインが自分のものになるかどうかが決まります。
逆に言えば、近接を理解できれば、ある程度のシンプルデザインは構築できるようになります。
では、「近接」とは何か?
「近接」は、その名の通り近くにあるもの同士をグループ化し、関連性の高いものをまとめることです。
左側には円や楕円、縦横の長方形、五角形、斜めになった正方形が混在しています。
これでは乱雑です。
右側のように円は同じ形に統一し、それを近くに寄せてグループ化します。
四角も同様に同じ形に統一し、グループ化します。
これが「近接」です。この概念が最も重要です。
住宅のデザインに応用すると、例えばサッシが挙げられます。
たとえば、0609の縦すべりを使い、さらに0612や0611を組み合わせたとしましょう。
同じ縦すべりでも、異なるサイズを使うと、統一感がなくなってしまいます。
特に南側のファサード外観は、水廻りや階段、収納などで複雑になりがちで、左側のように乱雑に見えることがあります。
ハウスメーカーがルールを統一している話もありますが、例えば「1つのサッシしか使わない」という統一が行われています。
結果として、指定されたものを考えずに配置することが一般的です。
ただし、見えない外観であれば統一しなくても問題ありません。
統一感は見える面だけで十分です。
もし北側がファサードであれば、バラバラになりがちですが、これを統一するだけで変化が生じます。
また、お客様が「ここを変えたい」と言う場合、近接や統一感が崩れそうになったら、この概念やデザインの美しさについて説明してください。
そうすれば、お客様も理解してくれ、信頼度も向上します。
まずは、近接を整え、次に2つ目の整列が続きます。
「サッシのラインを揃えましょう」とよくおっしゃるかと思います。
例えばセミナー会場などで、前後や左右で机が揃っていない、椅子が揃っていないと、同じ机や椅子でもごちゃごちゃ感や雑な印象が生まれると考えます。
揃っていないと、見えない線ができてしまいますが、それが揃うと線が消えていきます。
「ゲシュタルト」を調べていただくと理解しやすいですが、私たちは見えない自然界の線を心の目で感じ、ごちゃごちゃと感じるようです。
この線がなくても揃っているものは、目に入ってくると言われています。
住宅において線とは、例えばサッシの上のラインや縦のラインを整えることです。
何も考えずに揃えると、単調に感じられるかもしれませんが、これが基本です。
なぜ揃えるのかというと、それがきれいに見せるからです。
ただし、ここで多くの人が近接を忘れがちです。
縦のラインだけを揃えればよいと考え、上下で異なる大きさのサッシを取り付けてしまうと、同じものが同じ面になくなってしまいます。
これでは良いデザインになりません。
合わせるラインとしては、サッシの上端、下端、縦ライン、または玄関の上端、軒先や雨樋、縦樋、バルコニーの笠木、下の水切りの位置の線などが挙げられます。
物を配置すると、上下や左右でさまざまな線が生まれます。
これらを揃えるだけでも大きな変化が生まれます。
3つ目の反復は、パターンを再利用して繰り返すことです。例えば、ルイ・ヴィトンのデザインではLVのロゴを何度も繰り返し配置しています。同じ柄のパターンがくり返されている印象です。そのため、なるべく多くの要素を使わないことが、シンプルデザインの特徴となります。
4つ目はコントラストです。コントラストというのは、例えば色の使い方によって表現できます。補色を使ったり、深い色を取り入れることでコントラストを生み出すことができます。
あとは要素を寄せることで、下に空白が生まれ、壁面ができ、何もない壁面を大きく見せることで、そこにコントラストをもたらすことができます。
同じ円でもサイズの異なるものを使うことで、コントラストを引き立てることができます。
例えば、こういった使い方もコントラストになります。
このコントラスト、明確な答えはありませんが、何かを大きくしたり小さくしたりすることがコントラストになります。
色の濃淡や明るさ・暗さだけでなく、サイズの対比や大きさのコントラストも活かすことができます。
人の目を引きつけるには、こうした要素が効果的です。
すべての部屋に単純にサッシをセンターに配置するだけではなく、何か1つ大きな要素を取り入れるか、端に思い切り寄せるなどすると、一気に動きが生まれます。
「デザインとは何か?」と問われると、「整理整頓」と言われることがあります。もし「整理整頓してください」と言われた場合、何を行えばよいかが理解できると思います。
住宅において言及されているのは、以下の通りです。左側のように乱雑な配置されたものを、右のように整然とまとめることです。同じ形状の物が近接し、整列し、反復されているため、統一感があり、きれいにまとまっている印象を受けるでしょう。
名作建築のサヴォア邸もサッシの反復があり、整列されています。壁と一面の窓でコントラストも生まれています。ロビー邸も見えにくいですが、反復・整列されています。
iPhoneの画面がなぜ見やすく、使いやすいかと問われると、アイコンが近接、整列、反復、コントラストが取り入れられているからです。同様に、エンジンルームも昔の状態ではごちゃごちゃしており、素人が触れないような雰囲気でしたが、最近のものはシンプルになっています。
テレビのデザインも同様です。
年代が進むごとに、無駄な部分が次第になくなり、すっきりときれいになっています。
これは住宅にも当てはまり、フレームのあった箇所を削除することや、正方形だったものが横長や縦長に変化することで、見え方が大きく変わります。
年代の進行に伴って、デザインがより洗練されていることがわかるでしょう。
様々なサッシの組み合わせが存在します。
ハウスメーカーは、専用の仕様を設けて一般的にスタイリッシュなデザインに仕上げることができます。これにより、誰でも手軽に洗練された外観を実現できます。
一方、私たち工務店はそのような専用仕様がないばかりか、特注品の使用がコストを上昇させるため、既製品から選ぶしかありません。
既製品の中で選択肢は限られますが、サッシに関しては、近接・整列・反復・コントラストが事前に組み込まれているコンビネーションサッシと呼ばれる製品がメーカーから提供されています。
そのなかからおすすめや、一般的に使用されるアイテムを選んでみました。
これはYKKのサッシです。また、右側は対称に配置されています。対称とは、中央で分けたときに鏡像となる配置のことを指します。こういったアイテムがセットで販売されています。これらを外観のどこかに取り入れると、劇的に変化します。
その他にも、このような縦すべりとFIX(固定)の組み合わせもあります。これらを使うことは、外観を簡単にかっこよく仕上げるために最も手軽です。
これは2つのサッシの組み合わせで、良い外観を作るためにジョイント窓を使用しています。
サッシを配置すると、間に大きな隙間ができる場合があります。
間に大きな隙間があると「近接」が確保されなくなります。
そこで、サッシとサッシの間に近接が保たれるように目板を配置します。
縦や横など、これが配置できれば1つのまとまりになり、近接が保たれます。
小さなことですが、これを行うかどうかで外観が大きく変わっていきます。
もちろん、壁などを出しても構いません。
他にもさまざまな形のサッシがあります。左から2番目のサッシはあまり使われないかもしれません。幅のデザインにはあまりパターンがなく、「太い・細い」か「同じパターンの繰り返し」になります。縦のデザインもパターンはあまりなく、「上が長く、下が短い」というものが外観を整えやすいです。これらは反復して使うものではなく、1つだけ配置していきます。
これらも壁面に複数配置するのではなく、1つだけ配置すると良いです。このように色々と制限されるので、外観を作る上で一番難しいのは南面です。どうしても日照を取らなければならないからです。
コンビネーションサッシを使って目を引く例を見ていきます。
2階の左のサッシのかたまり(コンビネーション)は均一になっています。
ただし、左右の端を崩している感じがします。
特にそこに視線が引かれるのではないかと思います。
また、サッシはそこだけにとどまり、その右を壁としています。
南面ですが、収納が確保されているようです。
また、この写真はCGなのですが、色々な線を極限まで細く、フレームレスのような感じで仕上げられています。
これは、例として紹介します。左下の黒くなっている3連のサッシが少し微妙です。多分、蔵が入っているのだと思います。
これは、右上のサッシがコンビネーションになっていて、目を引くようになっています。このハウスメーカーは外観全体としては、左右対称でリピートするというアプローチを取っています。様々なハウスメーカーで傾向が異なりますが、同じ特徴で外観を構築し、魅力的な価格で提供できれば、受注が増えることになります。
この例では、2階左にコンビネーションサッシがあり、そこに注目が集まりますが、同時に右下の1階のサッシにも視線が向かいます。
こちらもコンビネーションサッシを活用した例です。
プランを作成する際、通常の間取りから進めるのではなく、外観からスタートする手法をご紹介いたします。
通常、間取りからスタートすると、「こんな外観になりました」という流れになり、その後に「もっとカッコよくするために、ここを変えて…」といった足し算のデザインが生まれることがあります。
外観からスタートすると、サッシの配置に制限が生じ、収納の設置などが難しくなります。リビングや寝室の位置が自然に決まり、それ以外のスペースに他の間取りを配置するしかなくなります。
逆算していくことで、1度でプランが決まり、契約にも近づく流れとなります。
このアプローチは奥が深く、様々なコツが必要です。時間の関係上、詳細な内容は機会があればお話できればと思います。